ツーリング記

斜里岳登山の断念と、凍った海上サイクリングー冬北海道ライド&登山⑧

登山口に到着し、予想以上の積雪に苦戦している僕。念願の冬季斜里岳登山は困難を極めているが、果たして登頂の可能性は残されているのだろうか…?

絶望的な朝を迎え、腰ラッセルから1日が始まった…。

<目次>
1.タイムリミット
2.野付半島へ切り替え
3.根室を目指しひたすら南下
4.最後の夜

1.タイムリミット

昨日の時点で、積雪・雪質的に登頂がかなり厳しいことは分かっていた。…いや、かなり厳しいというか、もう絶望的。

だけど、天気はもうこの上ない登山日和だった。天気は快晴、気温も高く、風が全くない。

滑落≒死の斜里岳東尾根をソロで登るうえで、天候の良し悪しは本当に重要。その天候がばっちりなので、何としても行きたいという気持ちが強かった。

しかし、だ。

腰まで埋まる思い雪。尾根のとりつきまでの3㎞を進むだけで、6時間以上はかかる計算だ。回復はしてきているけど、痛めている右ひざの不安もある。高強度のラッセルは膝への負担が大きいし、尾根までのとりつきで膝を痛めた場合、その先の登山は不可能になる。

だから、昨晩ラッセルの速度のタイムリミットを決めて、膝を傷めない範囲で進みタイムアウトした時点で下山することに決めた。

……で、最初のポイントでタイムアウトになった。

いや、マジか…。なんだかんだ、余裕をもって決めたつもりだったんだけどな。本当にこんなところで辞めちゃうのか??距離にして500mも進んでいない。

が、決め事は決め事。体が暖まってアクティブな状態になると、気持ちも引っ張られて「いや、ここから巻き返していけるんじゃないか?」とか「お前が雪道を走ってきたのは何の為だ?」という悪魔のささやきが聞こえてくる。

これは本当の『悪魔のささやき』で、死ぬ確率をグンと上げると思う。シュラフの中で冷静に決めたルールには、絶対に従わないと危ない。これはいつも自分に言い聞かせていること。

バイクまで戻ってきた。ここまで来れば大丈夫…。

何というか、自分なりに準備はしてきたつもりだったけど、まだまだ力が不足していたんだと情けなくなる。斜里岳に登るといっていた自分が恥ずかしいくらいだ。はぁ、次はもっと力を付けてからリベンジしなくちゃな。

昨晩は結構冷えていて、バイクもカチカチに凍っていた。霜を払いのけ、淡々と荷物をパッキングしていく。登らないのならここにいる意味はない。さっさと撤収しなくては。

日が昇ってからは、天気予報通りの無風・快晴という最高のコンディション。

凍った根北峠をダウンヒルしながら、朝日を浴びてやさぐれた心を温めていく。羊蹄山でも山頂前にホワイトアウトで撤退した。登山の方はどっちも叶わず、やっぱり悔しいのだ。

 

2.野付半島へ切り替え

登山を中止し、ぽっかりと開いた今日1日。せっかく天気が良いので、走りたいバリエーションルートを走っておくことにした

ここから行きたい場所は、まずは「野付半島」。左右が海に囲われた独特な地形を楽しめるし、きっと晴れているから眺望も良い。それに、野生動物も多いから何か出会いがあるかもしれない。

野付半島に入り、少し進むと海の向こうに知床連山が。あぁ…綺麗だな。

少し左には、さっきまでいた斜里岳も見えた。こうして外から眺めるのも綺麗だけど、やっぱり僕はあそこの上に登りたかったなぁなんて。

 

降りてきた今では、野付半島を思いっきり楽しむしかない。何か面白い遊びはないかな~と考えていると、野付半島の内海側が凍っているらしい…?

これはひょっとすると海の上を走れるかもな、なんで思ったら…

いえええええい!!!

糠平湖では湖上ライドが出来たけど、今回は海上ライド!これは予想外、そして嬉しい。

海水は淡水より凍りにくいから迂闊に氷上に出るのは危険なんだけど、氷上で釣りをしている人が数人いたのでこれはイケると判断。

糠平湖よりも、氷の広がり方が壮大だ。

怖くて遠くまでは行けないけど、どこまで凍っているんだろう?見渡す限り凍っている。

話しかけられたお爺さんに写真を撮ってもらったり。「カップラーメン食ってけよ」とお誘いを受けたけど、申し訳ないがお断りしておいた。明日が最終日だから、今日のうちに走行距離を伸ばしておきたかったのだ。

どこまでも凍ってるこの景色が、本当にすごい。

自転車で行けるところまで走ると、ネイチャーセンターなるものがある。ご飯は食べられないものの、自販機とトイレはあるし、ひと休み出来そうな場所だった。室内には野付半島の動物たちの写真や紹介もあったけど、今日は鹿以外見つけられなかったので残念。天気も良いし人気がある道だから、道路からは離れたところに居るのだろうか?

時間に余裕はないので、ちゃっちゃと折り返し。

左は氷、右は海、正面には知床連山。

野付半島は「左右を海に挟まれた不思議な道」なんだけど、左右で凍ってる海と凍ってない海の両方を見られるなんて。本当に面白い景色だ。

そして、目の前には知床連山が広がる…。もう最高の道過ぎて言葉が出ない。

 

3.根室を目指しひたすら南下

野付半島を堪能した後は、根室を目指して南下していく。明日が最終日でゴールは釧路の予定だが、日本最東端の納沙布岬へ寄り道してから帰ろうと思ったからだ。

はっきり言って膝の状態は悪い。下手に無理すると乗れなくなる痛みがある。

それでも、目標としていた羊蹄山も斜里岳も登れなかったので、最後の「雪道1,000km」だけはクリアしたいという思いがあった。

陽が傾いていく。あぁ、やっぱり冬の北海道は綺麗だ。

今日は一日を通して、風もなく穏やかだった。夕日を見ながらのんびり流して根室を目指す。

 

4.最後の夜

根室市に入ったところで今日は終了。出発が遅かった分距離は稼げなかったが、これなら明日は納沙布岬を経由して、ゴールの釧路まで走れそうだ。

思えば今日が、冬季北海道ライド最後の夜。

この寒空の元で寝るのは、今夜が7泊目。今夜はそんなに冷え込まないし、天気も良いからよく寝られそうだ。

シュラフに入り、支度を済ませて眠りにつく。長いようであっという間だったなぁと、少し感傷的にもなりながら、シェルターの窓から星空を眺めた。

明日はいよいよ最終日。最後まで悔いなく安全に、冬の北海道を楽しむとしよう。

つづく

走行距離:164km、獲得標高:1,377m

冬季北海道ライド&登山の各日の記録/まとめはこちら

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