コラム

僕がロングライドを好きになった本当の理由

好きが高じて、気づけばほぼ日本全国を走り、こうしてブログまで始めてしまった僕。

「自転車の何がそんなにいいの?」

「どうしてそんなに好きなの?」

今までたくさんの人に聞かれてきたけど、自分で納得のいく答えを返せたことはない。それは話すにはあまりに長くて恥ずかしいからでもあったし、言っても多分理解されないだろうという諦めからでもあった。そして一番の理由は、当の自分でさえ実はよく分からないからだった。

ロングライドが好きな理由は、今も正確には分からない。だけど、いろんな心境の変化がある中で、自分なりにかみ砕けたことがあるので、それをつらつらと書き残しておきたい。

僕の自転車との出会いは、以前【1話】友達『チャリで北海道まで行ったら面白そうじゃねw』からロードバイクを買い旅に出た話」で書いた通り、友人と横浜⇒北海道の自転車旅に出たことだ。走り切った達成感や、全身で土地や自然を感じる楽しみ、たくさんの人に出会い助けられた経験は、わかりやすい理由になる。

自転車に詳しくない人や、初対面の人にロングライドが好きな理由を説明する時には、よくこのときの経験を理由に使う。話のインパクトもあるし「多くの人が経験したことがないけど、なんとなく憧れるもの」だから。

だけど実はそれは、僕の本心とはちょっと違う。僕は「ロングライド」が好きなのであって「(放浪的な意味の)旅」が好きなわけじゃない。大抵の人が食いついてくる“人との出会い”なんて、極端な話、僕とってはどうでも良かった。

じゃあ本当の理由は何か?

それは、いちばん『生きている感じがする』からだった。

 

少し前の話にはなるけれど、僕はあれこれと手を出して、失敗したり迷惑を掛けたりした。もう終わってしまった事けど、あの時言えなかったごめんなさいも、目を背けたい現実もあった。逆に、うまくいったこともあった。ある場所では地位や実績が手に入り、誰かから尊敬される人にもなった。それらが同時進行で起こり続けた。

ここでの僕と、そこでの僕と、あそこでの僕…。同じ僕でいて別人のよう。いつも”その場でもっともらしい僕”が、何かそれらしいことを言っている。ちょっと待て、お前は誰だ?

 

良いことも悪いことも、現実味がなくなった。

 

嘘でも真実でもない「僕」のことを、相手に「僕」だと思い込ませるうちに、本来あるべき「僕自身」が空っぽになっていた。大抵それらしく話せば話が通じてしまったから、余計に乖離が加速した。

 

そんな頃、ロングライドをしている時間が救いだった。体力の限りを使い果たして、フラフラになりながら走るのが気持ちよかった。

真っ暗な峠が怖かった。

お腹が空いて目眩がした。

雨が冷たくて震えて走った。

疲労と睡魔で立てなくなった。

満点の星が綺麗だった。海面に揺れる月が美しかった。

吉野家の牛丼が美味しかった。気が付けば涙が出ていた。

朝日に歓喜した。太陽が体に染み渡った。

青空に流れる雲が穏やかだった。全部どうでもよく思えた。

 

辛いことも楽しいことも、紛れもない僕の感情だった。ペダルをこがなきゃ進まない自転車だから、ここまで来たのは僕だった。誰のせいでもないし、誰かのためでもない。

長い距離を走り切った自分なら、唯一認めてやってもいい気がした。

サドルの上でこの上ない『自由』を感じた。

そして、いちばん『生きている感じ』がした。ご飯が美味しくて、ぐっすり眠れて、風を切って走るのが気持ちよかった。

それだけで、僕にとっては十分すぎた。

 

SNSで行きたい場所を見つけては、殆ど空身で、夜な夜な走り出した。

もっといろんなことを感じたくて、全てを忘れ去りたくて、自分自身を確かめたくて。

だからロングライドに拘った。

人の気配のない道を1人で走っていると、もうそこは僕だけの世界だった。

星空も、雲海も、朝焼けも、全部独り占めしている様で気持ちよかった。稜線を吹くピリッとした風や、嵐が過ぎ去り静まり返った森の空気、轟音を立てる濃密な潮の匂い…。そんなものが、何か特別感を掻き立ていた。

 

自然は美しい。

その美しさに取り込まれる世界観に、僕は没頭していった。

今では、また少し違った楽しみも感じている。

 

脚力、体力、経験、環境。SNS上には僕より凄い人なんてゴロゴロ居て、それが刺激になった。「人間、こんなことも出来るのか。」そう気が付くと、その世界を少しでも感じたくて仕方なかった。その高いレベルは、僕をもっともっと追い込んで、さらに自分の命を感じられた。

と同時に、持って生まれた体力だけでは、到底クリアできない課題ばかりだった。それらをクリアするために、考えて工夫して、挑戦するのを楽しむようになった。

その過程で、自転車そのものの楽しさが少しずつ分かってきた気がする。

例えば機材の違いとか、ライドの技術とか、ゆっくり走っても変わらない気持ちよさとか。それらを感じながら走るのも、最近はすごく楽しい。ちょっとニッチで変態的だけど、自転車って面白い乗り物だと思う。

 

MTBを買ったり、自家ペイントや組み立てをしたりして、さらに楽しみが広がった。きっと今僕が感じている何倍も何十倍も、自転車は楽しい趣味なんだと思う。長いようで短い人生だけど、それを感じられたら僕は幸せだと思う。

あくまで僕にとっての自転車・ロングライドは「趣味」であって、それを仕事(ビジネス)にはしたくない。好きなものに関する嫌なものを見続け、家族・家計のために目を瞑れるほど、たぶん僕は強くないから。

だけど僕を救ってくれたこの素晴らしい趣味が広まればいいなと思うし、(実際に乗らなくても、間接的に自転車に関わる)みんなが幸せになれば、それはとても素敵な事だと思う。

 

思い付きで始めたこのブログも、今日で1年になる。

まだ大した規模ではないけれど、延べ数万人のサイクリストの目に留まってきたのは光栄に思う。一介の学生が綴る文章だけど、これが自転車趣味を通して、世界を素敵にする何かになればいいなと思う。

 

おわり

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