ツーリング記

【雪道380㎞】年越し宗谷岬から限界帰宅ライドー冬北海道⑥

年越しの宴を終え、静まり返る宗谷岬。その中で僕は一足先に帰路へとついた。

フェリーの時間がギリギリなので、380㎞先の苫小牧までの雪道を2日で走らねばならない。限界帰宅ライドが始まった…。

<目次>
1.宗谷岬出発
2.元旦に一人黙々と
3.200㎞の留萌着
4.睡魔の限界
5.苫小牧ゴール

1.宗谷岬出発

Tamaploさんとサイクリングマンさんと年越しそばを食べ、一応年越しの儀を終えた。ご一緒してくださったお二人に、お別れを言い撤収開始。差し入れを沢山頂いたりと、すごくお世話になりました。ありがとうございました!

年越しの瞬間はあんなに賑わっていた宗谷岬も、もうみんなテント内に戻って休んでいるのですごく静かだ。いや、風は強いので風音は煩いが。(笑)

Tamaploさん撮影

Tamaploさんは僕が朝になってから帰ると思っていたらしく、「今から苫小牧まで走ります」と言った時には「え?今から?今から???」とすごく驚かれてしまった。

せっかくだから見送るよと、出発まで見送って頂けた。年越しの瞬間に間一髪起こしてくださったり、お世話になりました。(ゾクゾクするようなライド、今度ぜひご一緒させてください…!)

ライトアップが綺麗

出発前にパシャリ。ライトアップされているので、来た時よりもすごく綺麗。

写り込んでいる真横に吹き付ける雪が、また雰囲気があっていい。(笑)現に、ひっきりなしにこんな感じで吹いていた。

ふふふ。

宗谷岬前にはこんな電光掲示板も。ここまでの道も向かい風だったはずなんだけど、ここから先も向かい風らしい。しかも8m/s。どうやら僕は風に好かれているみたい。←

こんな状況なのに、どこか『このくらいの方が面白い』と思っている自分がいるのが怖い。

Tamaploさん撮影

出発は02:00。さあ、果たしてフェリーに間に合うのか…??

 

2.元旦に一人黙々と

元旦の深夜02:00なんて、当然ながら誰もいない。

相変わらず強風と雪が吹き付けるけど、なんというか、このくらいが丁度いいとさえ思った。冬の北海道に僕が求めていたものは、年越し宗谷岬のイベント性じゃなくって、こういう世界だ。

この孤独感こそ相応しい

辺りは真っ暗なんだけど、ここだけ街灯があって明るくなっていた。ただの闇より、ぽつんと聳える灯りに孤独と美しさを感じてしまう。

往路は天塩~稚内間はオロロンラインを通ったけど、復路は速さを優先させて40号線を。40号は当然除雪もされているし、側道があるので走りやすい。信号もほぼないのでただただ走る。

可愛い足跡も。

人間は僕一人だけど、動物には元旦も正月ない。道端には可愛い足跡がたくさんあり、動物の気配もした。孤独な様で、案外賑やかな雪道である。足跡を楽しめるのも、雪道ならではだ。

夏はヒグマの心配があるからナイトライドは基本出来ないんだけど、冬はその心配もないからいい。実際に昨年夏北海道一周をしたときには、ライド中にヒグマに遭遇した。(北海道一周①|山道でヒグマに遭遇。北の大地の洗礼と絶景) 例え雪が降ろうとも、あの恐怖がないだけで超イージーだと思う。

深夜は快適

思いのほか雪は強く降り続き、走行抵抗が増していく。こんな事なら風で積雪が吹き飛ばされるオロロンラインの方がよかったかななんて思ったけど、ここまで来たら進むのみ。誰もいないし一番走りやすいコースを走れるのでまだマシでもあった。

次第に夜が更けてきて、天塩に着く頃にはもう明るくなっていた。残念ながら元旦の朝焼けや日の出は見られず。まあこんな天気だから仕方ないか。

海沿いはアイスバーンなので走りやすい

宗谷岬から天塩までは約90km。ペースは15km/hとピッタリブルべペースだった。雪道にしては悪くないので、このままのペースを維持したいところ。

天塩からはオロロンラインに復帰し、留萌までひたすらに南下する。西風なので概ね真横からの風、向かい風よりは遥かに楽だ。まだまだ先は長いので無理をしないように気を付けながら、とにかく南を目指した。

時折青空も

基本的には曇りか雪だったが、時たま青空を見せてくれその度に元気がでた。普段の生活じゃ天気なんて意識しないのに、自転車に乗っていると少し晴れたり青空が見えたりするだけでこんなにも喜べる。幸せの次元がぐっと下がる。(笑)

羽幌の辺りからは多少アップダウンも出始めるが、ここまで平坦ばかりだったのでいい気分転換になった。路面が完全なアイスバーンになっているのも相まって、あまり疲れを感じずに走ってこれた。

羽幌のペンギン!

夏に北海道一周をしたときも印象深かった羽幌のペンギン。ここまで150㎞、ペースは変わらず15km/h。よしよし、いい感じ。

走り出すときはフェリーに間に合うか少しの不安もあったが、ここまでの走りでほぼ間違いなく間に合うだろうと確信した。まあ、まだ半分も走っていないんだけど…。(笑)

絶景ポイントも雪空

今日のうちにどこまで走り、どこで休むか走りながら考える。200㎞地点の留萌か、その先の滝川あたりか。出来れば走行距離のバランスや到着時間帯的に留萌で休みたいなあと思いながら、気づけば200㎞を通過し留萌市に入った。

 

3.200㎞の留萌着

留萌に到着したのは15:30頃。ここまで207㎞、グロスペースは15.7㎞/hと雪道にしてはなかなか良いペースで走れている。

留萌でのログ

後半アイスバーンが楽しくて調子に乗って飛ばしたせいか、最後の30㎞くらいが異様に疲れた。走りながら思っていた通り、ここ留萌で深夜まで寝て明日の夕方ごろ苫小牧着を目指すことにした。

腹ごしらえをしてシェルターを立てる場所を探す。しかし、目星はいろいろ付けていたのにすべて断られてしまい、寝床を確保できなかった。仕方ないので、悔しいけど地元のカラオケへ。ところがなんと、ここも元旦から大混雑なうえ、深夜料金がビビるほど高くて実質利用不可…。

ちゃんと寝ることはあきらめた。

結果、適当に仮眠し22:00に留萌を出発。

寝るつもりでいたところを寝られなくなるのはかなりの痛手で、走ろうとしてもパワーがなかなか出なかった。まあいいさ、ラスト180㎞くらい何とかなるだろう。

 

4.睡魔の限界

はじめは仮眠効果もあって良かったが、だんだんと睡魔が襲ってきた。最近無茶なライドはしていなかったので、睡魔に苦しむのは久しぶり。

また何処かで仮眠をしたかったが、降雪がひどいし寝られるような場所もない。ちょっと辛いが仕方がないので先に進む。

まだまだ雪は降る

車も通らない時間帯なので路面にも雪が積もっていき、走行抵抗が増していく。ただの新雪ならまだマシだが、除雪車のガッタガタのタイヤ痕がそのまま残っているので本当に走りにくい。

MTBの太いタイヤとサスペンションがあっても、これはかなり体に応えた。とにかく早く仮眠できる場所にいきたいのに、全然進まない。

横になると起きれないので座ったまま寝る。

やっとの思いで道の駅に到着。暖房はないが屋根壁のあるベンチがあったので、たまらず20分ほど仮眠した。室温が0℃以上なのでシュラフを出すまでもなく寝られるが、吐息が凍り付いたネックウォーマーが溶けて濡れてしまうのが不快でならない。

仮眠の効果でシャキッとして、再び夜道に走り出す。日の出が遅いし天気も悪いので、07:00頃にならないと明るくならないのだ。まだ夜は長い。

車が走り出した。

かれこれ10時間近く、暗闇とライトに照らされる雪しか見ていない。冬の北海道ツーリング、ここまで約一週間走ってきたが、太陽を見たのは何時間だろうか。(笑)

バイクも自分も、走っているはずなのに白くなっていく。

それでも、走っている限りゴールは近づき続ける。その実感は全くわかないけど、クランクを回す限り着実に前に進んでいるのだ。雪空だっていつかは晴れる。そう信じて走り続けた。

細かい雪で白くなる

 

5.苫小牧ゴール

ちょうど日の出を迎えるころ、岩三沢市を抜け豪雪地帯から脱出した。と、同時に、急に太陽が顔を出した。

太陽がこんなに気持ちいいなんて。

あぁ…太陽ってこんなに気持ちいいものだったんだと、心から思った。苫小牧まではあと50㎞くらい。満身創痍の僕に、太陽の光がしみ込んでいく。

さらに、道の途中で車から声を掛けられた。話を聞くと、なんと僕のツイートを見て札幌から追いかけてくれたらしい。暖かい応援と差し入れまで頂いてしまった。ありがとうございました。

苫小牧に近づくにつれ路面の雪もなくなってきて、走行環境はとてもよくなった。さあ、ラストスパート。

 

そして…ゴール!!!

ゴール!!

昨日スタートした宗谷岬から387㎞、獲得標高1,575m。総所要時間は35h50mだった。ロードバイクの感覚からすると半分くらいしか走れてないけど、本当につかれた。そして、本当に達成感がある。

帰りのフェリーにも超余裕で間に合ったので、ゆっくりとお風呂に入って睡眠もとれる。辛かったけど、凄く楽しかった。

帰りのフェリー甲板にて。

これにて冬季北海道ツーリングも終了。全体では、走行距離931km、獲得標高5,680m、走行日数約6日。

北海道最高標高の十勝岳や、日本最北端での年越し、爆風オロロンラインなど、”楽しい”要素てんこ盛りの一週間だった。かねてから思い描いてきた雪上ロングツーリングは、想像よりもキツく、そして楽しかった。

夏の北海道一周も良かったし、やはりここ北海道はサイクリストの聖地だ。季節を問わず楽しませてくれるなんて最高だと思う。次はいつになるか分からないけど、きっとまた、僕はここに来るのだろう。そんなことをぼんやり考えながら、北の大地を後にした。

おわり

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