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冬の北海道を自転車でテント泊ツーリングするための準備と装備【年越し宗谷岬は危険か?】

『冬の北海道を、どこまでも続く雪道を走りたい』いつの日からか、そんな想いが僕に取り憑いて離れなかった。

ご存知の通り冬の北海道は厳しい環境だ。気温は常に氷点下で、日によってはマイナス20℃まで落ちる。降雪や地吹雪によって走行不能になることもあり、事実それで亡くなった方もいる…。そんな環境を自転車で走ろうなんて少々頭がおかしいのかも知れないが、走りたいものは走りたい。だから、走る。

とはいえ命を懸けたい訳ではないので、潰せる危険は全て潰す。その危険を潰す過程をこの記事ではまとめていきたい。

<目次>
1.想定される環境と危険
2.装備について
3.走行計画
4.生きのびるために
5.年越し宗谷岬は危険か?

1.想定される環境と危険

まず考えるべきは、最悪の状況だろう。どんなツーリングにおいても、まずはそれを想像することから始まると思う。

この想像をどれだけリアルに生々しく出来るかで、ライドの安全度合いが決まる。そして、起きうるリスクを段階分けして把握できれば恐怖心がなくなり、ヤバい状況でも冷静に最善の判断を下せる。

冬の北海道を走ることを思いつき、想像した危険は次の通り。

環境と危険

●過度な低温 : -30℃

→凍傷、低体温症

→→後遺症、患部切断、死亡

●吹雪 : 強風、ホワイトアウト

→①立ち往生

→→低体温症、凍傷

→→→後遺症、患部切断、死亡

→②事故

→→走行不能、重軽傷、死亡

●過度な積雪 : 除雪能力を超えた場合

→立往生

→→同上

●暖冬

→①降雨

→→装備・バイク浸水

→→→防寒不能、駆動部凍結

→→→→低体温症、走行不能

→②路面融雪

→→シャーベットorブラックアイスバーン

→→→走行不能、他の交通による事故

→→→→立ち往生、重軽傷、死亡

 

最終的な敵は⑴寒さによる低体温症や凍傷、⑵事故。

⑴については、それに至る状況は様々考えられた。単純な寒さや立往生のジリ貧状態から、暖冬による降雨という最悪の環境まで。

オロロンラインは15m/sの風が吹き荒れた

例えば、吹雪でビバークすることにし、指先の感覚がなくなりかける中あの不器用な分厚いグローブでシェルターを立てる自分。

例えば、突然の雨に打たれバイクが凍り、シャーベットの路面になって走行不能、街までバイクを押しながら滑る足元で30㎞山道を歩く自分…。

リアルで生々しい、最悪な状況たち。

みるみるうちに雪は積もる

冬山登山(冬富士登山に海抜0mからチャリで行ってきた~登山編~)や昨冬のビーナスラインライドの経験から、自分と装備がどれだけ耐えられるのかは割と正確に分かっていたので、それをもとに備えることにした。

用意したのは冬山登山のテント泊装備一式と、立往生の際ビバークし最低2日間は(行動し)生存できる食料と燃料だ。その装備があれば、状況が好転した際に、自転車での行動が不能でも徒歩で街まで移動することが可能になる(最寄りの街までの距離は最長30㎞)

晴れてたと思ったらすぐに大雪に。

どんなに状況が悪くとも、主要な道路を走る以上、3日間以上誰の助けも受けられない状況は考えにくい。(もしそうなったら町壊滅レベルだと思う)仮にそこそこの災害が起きても、生存する自信がある。

ホワイトアウト気味。普通に怖い(昼間)

⑵の事故は、自分でそなえるには少々限界がある。が、できることはやった。少しでも視認性を高めるために、バイクの右後方から見える場所やホイールに反射テープを貼った。

真っ黒よりは格段に目立つようになった。

当然、いつもの反射ベストと右足の反射テープ(+反射ペダル)やリアライトの類は付けている。あとは臨機応変に、車の挙動や自分の見え方に気を配りながら対応する。

視界不良でこれはヤバいという時には歩道を走ったり、ライトの付け方を工夫したり。走る道も、交通量を避けつつ、除雪がされている道を選んで走る。どれだけ事故確立が下がるかは定かではないけど、とにかく事故を起こさないように気を配り続ける。

【2020/02/07追記】

 

 

2.装備について

持っていった装備は、先に書いた通り冬山登山のテント泊装備一式と、立往生の際ビバークし最低2日間は(行動し)生存できる食料と燃料。

荷物はこれだけでザック等は無し。

ただし、その総量は必要最低限に絞り『100%必要なものだけ』をバイクパッキングのスタイルで積載した。

軽さにこだわる理由はいろいろあるけど、『機動力=安全性』という考えもある。確かに荷物が多いと安心感はあるけど、まずい状況が分かった時、そこから逃れられるかどうかは機動力で決まるし、脚が遅いととれる選択肢の幅が極端に狭くなる。状況は一分一秒で変化するし、その峠を越えられるかが雲泥の差にもなったりする。

 

ウエア系

まずは着ていたものから。基本全部モンベル。

着ていた服たち

 

ウエア系

 

基本冬山装備。行動中汗をかかないために、暖かいと言うよりは”寒くない”構成。

-5〜-15℃対応。-20℃だと少々寒い。

 

ギア系

次にギア系。テントやシュラフやクッカー等々。

ギア系を並べるとこんな感じ

 

ギア系

・テント等

モンベルULドームシェルター1型エアマット、グランドシート、ダウンハガー#1、テントシューズダウンジャケット

・食料等

サーモス水筒750ml、気化促進剤入りODガス大、ガスバーナー、クッカー、α米4食等

・その他

バイク用工具類、医薬品類、替えのインナー等

必要最低限のテント泊装備。

正確にはテントではなくシェルター(ツェルトの類)なので、風除けがないと張れない。道の駅等の壁や雪壁がある事が前提だ。

冬の北海道にしてはかなり軽装?

 

バイク本体

・バイク

ドロハン化MTB

・スパイクタイヤ

シュワルベアイススパイカープロ(27.5×2.25″)

・バック類

トピーク:フロントバック8L、モンベル:トップチューブバック0.5L、ブラックバーン:フレームバック4L、ブラックバーン:サドルバッグ10L、R250:ステムポーチ0.8L、不明:ドライバック5L×2個

アクセサリー類

Volt800Volt400×2、オムニ5×2、Garmin eTrex30x、パドローネスマート等

 

肝はスパイクタイヤ。

アイススパイカープロは高価だがその分軽くふつうのMTBタイヤに劣らないスペック。走りやすさは大事。

その他には、特別用意したものはない。いつも使っているギアたちだ。

全て大事な装備

とにかく、装備は絞る。

その方が持ち物一つ一つに厳密な役割りが与えられるので、中途半端な想定でいくつか持っていくよりもいい結果が出る。たくさん持っていたところで、最適に使い分けできないなら持つだけ無駄だ。

【2020/02/07追記】

 

 

3.走行計画

さて、ではどんな走行計画を立てたかというと、フェリーターミナルのある苫小牧を発着点に、苫小牧⇒富良野⇒十勝岳(北海道道路最高標高点)⇒旭川⇒天塩⇒オロロンライン⇒宗谷岬(日本最北端で年越し)⇒留萌⇒滝川⇒苫小牧。

1日平均150㎞を走り、予備日が約1.5日あるペースだ。

走行ログ。計画通りに走れた。

正直雪道のロングライドは経験がないので肝心の走行距離が読めなかったが、過去のチャリダーたちの行動記録を見る限り、自分の体力と装備なら問題なく走れるだろうと予測した。

冬富士登山に自転車で行った際(雪山】冬富士登山に海抜0mからチャリで行ってきた~自転車編~)も、今回と同程度の装備だったから、その走行データを基にして考えた。

1日の行動時間はMAX13時間、グロスペースが12km/hでも走り切れる。十勝岳以外平坦なので、おそらく大丈夫。

天気が良ければオンロードに近い

もちろん予備日を設けたほか、予備の最短ルートやエスケープルートも確保しておいた。

十勝岳やオロロンラインなど、自分の興味で多少エクストリームなルートを選んでも居るので、もし状況が悪化して所定を続行できないときには目的地への最短ルートを選択し、適宜予定を変更するつもりでいた。(ガーミンにはそれ用にいろいろルート情報を入れておいた)

お気に入りの100円パスタ。1日5個は食べてた笑

食事は基本コンビニ(セイコーマート)の予定で、早さと低価格を重視。特に年末年始という事もあって地元の飲食店はあてにならないので、確実に営業しかつ希望通りの補給食を確保できるコンビニがベストだった。

コンビニに立ち寄るのは50㎞くらいに一度で、その間の補給食はフレームバックやハードシェルのポケットに入れておく。

必ず暗いうちから走る

行動開始は04:00頃、終了は17:00以前。可能であれば行動時間を1時間くらい前倒しして03:00には走り出す。

12月~1月は非常に日が短いため、行動開始も終了も暗いうちという事になる。ライトのバッテリー管理に注意が必要。

深夜は快適

出発が早いと言われそうだが、冬の北海道でも走行に最も適した時間は深夜だと思うので、そのゴールデンタイムを逃したくないのだ。

実際問題として、寒さで死ぬより事故で死ぬリスクの方が高いと思われるので、他の交通が少ない時間が最も安全。そして、状況が悪化した際も待っていれば夜が明け活動がしやすくなる。これがもし日暮れだったりすると、そのまま一晩明かさなくてはならないため圧倒的に危険だ。

この孤独感こそ相応しい

ルート選定はかなり迷ったが、北海道の各地区が出している『除雪マップ』を参考にして計画した。そもそも除雪されていないとMTBでもまともに走れないからだ。

この除雪マップは優秀で、道の除雪感覚が分かるだけでなく、逆算して交通量を推測することもできる。(除雪が頻繁=交通量が多い主要道路)よって、主要道路は深夜に通過し準主要道路を昼間走るように意識して計画した。

 

4.生き延びるために

冬の天気は急変しやすいので、走りながらも常に『今ヤバくなったらどうするか』を考え続けた。

例えば、次の街までのコースプロファイルやエスケープルートを頭に入れておいたり、緊急時に逃げ込めるバス停や廃墟を常にチェックし何km地点にあったか記憶しておいたり。

吹きさらしではビバーク出来ない

また、積雪が数cmでもあると走行ペースが大幅に変わるので、天気予報や雲の流れには気を配った。次の街まで行くか、停滞するか。例の除雪マップや車による圧雪のされ方を参考に、路面状況を的確に読む必要があった。

状況は一瞬で悪化する

消費したカロリーや持っている補給食の量、身体の状態、装備の状態、天気予報の推移…。いつ何が起きてもいいように、現状把握は常にしておく。最適な判断が出来なくなるのが、最も危険だと思う。

全ては楽しむために。

…まあ、こんな書き方をすると堅苦しいが、自転車に乗っている間すごく暇だというのもある(笑)なんというか、自分というキャラを操作するゲームをしているような感覚で、体力がいくつだとか装備がどうだとか考えると、楽しいし役に立つ。

常にこれをゲーム感覚で考えていると、色々なことが無意識のうちに把握できているようになるのでオススメ(笑)

 

5.年越し宗谷岬は危険か?

さて、最後に話題にもなった『年越し宗谷岬は危険か?』という議論について。*僕は所謂バイク(自動二輪車)には乗ったことがないので、あくまでチャリダーとしての意見です)

すごい人数…!

正直、冬山に比べれば「除雪され、人がいて、店があり、基本いつでも助けが呼べる」北海道は、たとえ真冬の雪道であったとしても大して危険ではないと思う。寒さに耐えうる装備と常識的な判断力があれば、気象条件によって死ぬことはまずないはず。

ただし、冒頭で上げたような「最悪な状況の想像」が出来ない人は、年越し宗谷岬に限らず何をやっても危ない人であって、いつか何かしらの事故を起こすのだと思う。

 

「とりあえずやってみよう」精神は大事だし、僕も基本それでライドを決めている。「どんな世界が待っているか分からない」というドキドキ・ワクワク感はライドに欠かせない興奮だ。

だけど、最悪な状況だけは常に想定しておくべき。それが出来ないなら、年越し宗谷岬に限らず挑戦系ライドはやらない方がいい。

深夜の降雪を喜ぶくらいの余裕が欲しい…

寝られない寒さを知らないならベランダで一晩寝てみればいいし、吹雪が分からないなら台風の中薄着で自転車に乗ってみればいい。ヤバそうなものをクリアに出来れば、何も恐れることはない。

危険というのは『死の目があるサイコロを振る』ことだと思う。準備していれば、年越し宗谷岬はそうではない。

…と、長々と偉そうに書きましたが、人それぞれのスタイルがあって、この内容がベストとは限らないはずです。皆さんが雪道や冬の北海道を楽しむきっかけや手がかりになれば良いなと思っています。

(万人にオススメはしませんが)冬の北海道、凄く楽しかったですよ!!

おわり

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