ツーリング記

北海道一周⑧|歴史的な台風21号接近。暴風に負けゴールはお預けに。

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北海道一周8日目。(7日目はこちら)

函館まで残すところはあと370㎞。頑張れば充分1日で走れる距離である。しかし、天気図を見るとヤバそうなものが本州に。関西地方に致命的損害を与えた台風21号が接近していたのだ。

そのせいで、夕方からは15m/s近い暴風雨が始まり、深夜にかけて大荒れになる予報…。果たして今日中に走り切れるのか?かなり怪しいが、兎に角走ってみるっきゃない。

<目次>
1.苫小牧~洞爺湖
2.いよいよ風が吹いてきた
3.平坦でインナーロー?
4.ゴールはお預けに

*** *** * *** ***

まずは苫小牧を通過し、洞爺湖へ向けたヒルクライムを開始する。

昨日しっかり休んだおかげで、体の調子はなかなか良かった。脚の疲労はそんなにないし、寝不足な感じもしない。うん、これなら状況が悪くても、今日中に走り切れるかも知れないぞ。

その為にも、荒れ始める夕方の前になるべく先へ進んでおきたい。風向きは南東だから、初めは横風で途中からモロに向かい風。ただし、恵山まで行ってしまえば暴風の追い風で函館までワープできる。

いけるなら深夜に函館着、無理なら八雲町か鹿部町でビバークして明日朝に函館着。万が一の寝床の目星もついた。

がっつり雨に打たれる

そんなことを考えながら走っていたら、早々に雨が降ってきた。予報じゃもっと遅い時間から降り出すはずだったんだけど…やはり天候は不安定だ。

苫小牧から洞爺湖までの道は緩いヒルクライムだが、大型車が多かったのと路面が崩壊レベルに悪かったせいで、休むどころの話じゃなかった。唯一の救いは、周囲の木々のおかげで風が遮られていたことだ。

セコマの軒先でご飯を食べる

洞爺湖のあたりで、1人のチャリダーを追い抜いた。ロングテールの小径車だったから印象深いんだけど、こんな中でも同じように走っている人がいると思うと、それだけでなんだか頑張れる。

海へのダウンヒルを終えると、雨は霧にかわり強風が吹いてきた。やっぱり、天気が悪くなるのは早いみたいだ。

*** *** * *** ***

晴天時には気持ちのいい直線道路も、こんな日には表情が180°違う。視界をさえぎるものがなくて気持ちい、ということは風を遮るものがなくてキツイ、ということでもある。

海からの横風がかなり強い。向かい風の時はDHバーが大活躍だけど、横風の時はどこを持つのがいいんだろう?いろいろなポジションを試してみたけど、正解は分からなかった。

これはこれで趣がある?

まだ「強めの風」くらいだけど、時折吹く突風に車体が煽られる

このあともっと強くなって、しかも向かい風になるなんて気が重い。時間が経てばたつほど状況は悪化するから、文句は言わずに淡々と走るしかない。グロスペースを意識して、とにかく自転車に乗る時間を長くする。

*** *** * *** ***

八雲町を過ぎると、いよいよ向かい風の本番区間が始まった。

容赦ない強風が、絶え間なく僕を押し戻す。5m/sで18km/hぶん、10m/sで36km/hぶんを今の速度に上乗せして走ったときの空気抵抗だ。

こう考えると、DHバーを使って頭も意識的に下げていても、いいとこ17km/hしかでないのも納得がいく。これだって35km/h以上で走っているのと同じパワーを僕は使っているのだ。

グロスペースがみるみる落ちていく。それもそのはず、休憩や信号停車を一切しなくても、20km/hをゆうに切っているのだから。

海も大荒れ

それでも、僕は踏み続けた。190時間切りの夢が、まだ目の前に見えていたからだ。八雲町から恵山までの向かい風区間はちょうど100km。なんとかグロス15km/hで走って6時間40分で乗り切れば、後は追い風でぶっ飛ばして函館に日付が変わる前に着けるはず。

しかし、台風接近に伴い状況は悪化の一途をたどった。

向かい風はどんどん強くなり、ついには平坦でインナーローを使う羽目に。ちょっとした丘の頂上付近で突風が吹いたときは、いよいよ自転車に乗ることができなかった。初めて「押し歩きで進む」ということを経験した。

お決まりの真っ暗写真ですが、一応雨が降っています。

自分の後ろにあったはずの190時間切りのラインは、いつしか僕を追い抜き先へといってしまった。最後の最後、夢を見させてこれか。まるで亀にでもなった気分だ、そのラインは目の前にあるのに、ジワジワ離されていく。僕はママチャリみたいな速度しか出ない。

これは根性論ではどうにもならない。物理的なパワーの話で、まだ向かい風区間が50km以上残っていて、風は強くなる一方ときた。どう計算しても勘定が合わない。

もう悔しくて、走りながら涙が出てきた。

*** *** * *** ***

そのころ、満を持して雨が降ってきた。いよいよ台風の本番である。

先ほど流した涙は、あっという間に雨に洗われた。あたりもすでに真っ暗…。悔しいが、どうするべきかは明らかだった。疲弊した状態で真っ暗な夜、台風の暴風雨にさらされながら、誰も来ない海岸線を一人で無補給区間の90km走るのは、どう考えても自殺行為だ。

仕方なく、最後の街:鹿部町の道の駅にテントを建てた。風除けも十分な優良物件、こんな状態の時には、テントを建てられる場所があるだけでありがたい。(もちろん、今朝出発前にテントを立てられそうな場所をgoogleマップのストリートビューで確認したうえでここまできている)

設営が完了し、マットの上で悔しさを噛み締める。もっと脚力がほしい。あと90kmだったのだ。

テントの外に吹き付ける台風の轟音を聞きながら、明日に備えて眠りについた。

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距離 277.9㎞|獲得標高 2,375m|グロスタイム 13時間59分

つづく

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