ツーリング記

北海道一周③|夕暮れのオロロンラインへ。ひたすら続く平原を一人駆け抜ける。

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北海道一周3日目。(2日目はこちら)

今日は札幌からひたすら北上し、北端にある町、稚内を目指す。昨日までのアップダウンのある海岸線とは異なり、一直線の平原が主なコースのようだ。

道の先には、北海道の画像でたびたび目にする風力発電所「オトンルイ風力発電所」や、それを含む「オロロンライン」がある。北海道一周をするにあたり、走りたかった有力候補の道。非常に楽しみだ!

<目次>
1.予報に反して向かい風
2.オトンルイ風力発電所
3.静かな平原
4.3日ぶりの風呂

⇧走ったのはここ

*** *** * *** ***

昨日は就寝が遅れてしまったが、今朝はいつも通りに04:00起床。

シュラフから上半身だけモゾモゾとはい出て、昨日買っておいた菓子パンをつまむ。かなり眠いが、ここでぼーっとしていると時間を無駄にしてしまう。なんでもいいから取り合えず口に入れて噛み、脳を起こす。

撤収前の1枚。テントが狭くて脚しか映らない(笑)

目が覚めてきたら、自販機のコーヒーを買いに行った。この缶コーヒーを飲み干したら撤収を始めるというのが、いつもの僕のリズム。コーヒー片手に天気予報をチェックすると、天気は微妙だが風向きはいいようだった。

コーヒーを飲むとサイクルジャージに着替え、撤収を始める。撤収時間はパッキングまで入れて15分以内。走り出す前にバイクを点検。タイヤに空気を入れ、チェーンにオイルを注す。よし、行くか。

海にそそぐ大きな滝

天気予報では追い風と聞いていたが、どうやらこれは向かい風。さほど強くはないものの、ロングとなるとやはり辛いものがある。ストレッチをしつつアップを済ませると、今日もまたDHバーを多用する走りになった。

北海道の沿岸の道には、こんな感じの大きな滝がたくさんあった。視覚的に変化があるというのはいいことで、長距離を走っていても飽きないというのはとてもうれしい。

誰もいないトンネルは快適

滝のほかにも、やたらトンネルが多い。1つのトンネルが平気で数キロあったりするから、そこも特別感があった。

トンネルは道幅が狭く危険で煩いから、普通サイクリストはトンネルを嫌う。僕も基本走りたくないけど、北海道に限っては交通量が少ないから楽しめたのが良い。

さらに今日も向かい風だったから、無風になっていたトンネル内が唯一の休憩区間にもなった。トンネルに救われた数少ない体験である。

トンネル地帯を抜けると、だんだんと晴れ間が見えるようになった。依然として向かい風だが、あまり贅沢は言っていられない。本当は、曇りでもいいから追い風が嬉しいんだけど。

 

3日目である今日一番つらかったのは、実は向かい風ではなく着心地の悪いウエアだった。

函館を出てから3日間、風呂に入っていないうえ着ているサイクルジャージも同じ。真夏のような汗はかかずとも、流石にべたつき気持ちが悪い。朝晩ボディーシートで体をふくだけじゃ、やはり限界があるもんだ。

もはや自分では匂いが分からないし、観光地にもいかず誰にも会わないからまだいいか。唯一申し訳ないのは、セイコーマートの店員さん。臭い客でごめんなさい。

『今日こそはお風呂に入って洗濯をしよう。その時間を作るために、早く走ろう』

クランクを回す脚に、思わず力が入った。

留萌からは青空に変わり、またあの綺麗な海と空の青色が見られた。僕はこの色がすっかり気に入った。これを見て走っているだけで、幸せである。

しかし、のんびりもしていられない。実はこのとき、後ろから雨雲が迫ってきていた。目の前は美しい海と空、振り返ればどす黒い雲と、なんとも落ち着けない空模様…。

*** *** * *** ***

そうこうしているうち、200kmを超えた。昼過ぎには200km走っているなんて、不思議な気分だ。

このあたりから交通量も更に減って、たまにいるツーリング中のライダーたちくらいしか見なくなった。道が単調でどうも気合が入らない。僕の身体もそろそろ疲れてきて、走りがタレてきた。

と、そこに、平原にひときわ目立つ巨大な風車の列が。ああやっと着いた、オトンルイ風力発電所である。

間近にこんな風車が並んでいる場所は、他にあまりない。やはり近くで見ると迫力があるし、周りに何もないという立地がまた、これの存在感を際立たせている。

あるほど、これが有名になる理由か。

沢山並びすぎて、イマイチ写真の構図が分からない。どうやって撮ったらいいものだろうか?

あれこれ苦戦したが、納得いくものは撮れず、日も暮れてきてしまったので先を急ぐことにした。こんなところで時間を使っていては、僕の今日最大の楽しみである、風呂と洗いたてのジャージを得られなくなってしまう。

あそこに座って海を眺めたい…!

とか言いつつ、写真を撮れないモヤモヤを晴らすべく遊んでみたり。(笑)

オトンルイ風力発電所の、道を挟んだ向かい側はこんな感じの平原?湿原?になっている。なんというかこれが、遠くから見ると無性に入ってみたくなる場所なのだ。(笑) 所々車が入れるようになっていて、わだちや踏み跡の類があった。

気持ちのよさそうな小高い丘の上にベンチのようなものがあって、そこまでの踏み跡もある。これは行くしかない!

せっかくならと自転車を担いで踏み込んだ

結論から言うと、行って後悔した。

草は思いのほか深く僕の腰上まであるし、蚊やら棘やらに刺されまくった。景色もそんなに良くなかった。

まあ、こんな時もある。行かずに後悔より、行って後悔した方がいい。

*** *** * *** ***

あとはもう、稚内に向かってオロロンラインを走るのみ。オロロンライン自体は既に入っているのだが、ここからがオロロンラインの本番である。

この先約50km。見渡す限り、何にもない。しいて言うなら、自転車を立てかけている反射ポールがあるくらいか。

スマホのエフェクトがオンになっていたらしく、2枚とも色味がちょっと違う。

ああ、なんて素晴らしいんだろう?

オトンルイ風力発電所を過ぎた辺りから、ずっと吹いていた向かい風が止んだ。人も車もいない。本当に、なんにもない。右には平原、左には湿原と海が広がっている。

今日の走行距離も300kmを越えようとしている。

もうヘロヘロのはずなのに、疲労を全く感じなかった。絶景に興奮しているというよりも、心はとても穏やかで心地よかった。

ただひたすらに、愛車と30㎞/hの風を感じ続けた。きっと僕は、こんな道を求めていたんだろう。

*** *** * *** ***

日が落ちて、辺りは真っ暗に。

ちょうどそのころ、稚内市に到着した。あのオロロンラインの心地よさは何処かへ消え、蓄積した疲労がどっと体にのしかかってきた。そうだ、今日は風呂に入れる日だった。

調べておいた風呂『稚内天然温泉 港の湯』へ。漁港の目の前の立地の、素敵な温泉である。

漁港には立派な漁船が並んでいた。

漁港には独特な匂いがあって、実は漁港ごとに結構違うものである。場所によっては磯のいい香りだったり、逆に強烈過ぎて臭かったり。

ここ稚内は、幼いころ父と夜釣りに出かけた漁港に似た匂いがした。懐かしくて、居心地のいい匂いだ。

温泉施設内もレトロないい雰囲気

シャワーで汗を流し、湯船につかる。この後コインランドリーにも行かなくてはならないから、あまりのんびりも出来ない。僕は真っ先に好物の露天風呂に向かった。すると、夜風があの漁港の匂いを運んでくる。

あゝこの匂い…。このままお湯に溶けてしまいそうだ。

夜空をぼーっと眺めていると、腰がどんどん重くなっていく。湯加減もちょうどいい。

『何してる?さあ行け、早く洗濯に行くんだ』

もう一人の僕が、頭の中で語り掛ける。

『こうしていても明日のお前が辛くなるだけだぞ?寝床だってないだろう?』

『起きる時間は決まっているんだ、睡眠時間を減らしてどうする?』

ああもう煩いな、そんなことわかってるよ。その声に耐えられなくなって、僕は仕方なく湯船から出た。正論は正論である。

ランドリーに行って洗濯を済ませ、寝床の公園へと移動。

が、その道中に雨に降られる。せっかく洗って乾かした服が雨でびちゃびちゃになるのは、とても悲しい事だった。ここまでの3日間、なんだかんだで毎日雨に打たれている。北海道の空はかなり気分屋みたいだな。

 

序盤の3日間が終了し、走行距離は887㎞になっていた。296㎞/日のペースで、当初の目標の270㎞と比べ貯金を作れている。ここまではかなり順調といったところだ。この先の中盤3日間は、疲労と中だるみできっと辛くなるだろう。明日に備えストレッチをし、眠りについた。

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距離 318.3㎞|獲得標高 1,875m|グロスタイム 14時間49分

つづく

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