ツーリング記

深夜の大荒れ箱根ヒルクライム

僕は朝焼けが好きだ。

東の空がだんだんと青白く変わっていって、次第に真っ赤に染まっていく。オーバーナイトで走ったときには、真っ暗な夜を走りぬいた達成感と安堵感、絶景の独占感に浸れる時間だ。空の色が変わる刻、得も言われぬ感動がある。

オーバーナイトライドの割合が高い僕にとって、朝焼けは特別なものなんだ。

つい最近まで梅雨の影響で毎日雨模様だったけど、やっと梅雨明けをしてくれた。曇りじゃ朝焼けをみられないから、実はうずうずしていたり。そんな折、丁度よさそうなタイミングが来た。時間が取れそうで天気も悪くない予報・・・これはもう行くしかない。

日帰りコースでの僕のお気に入りは、箱根大観山から見る朝焼け。

近場では群を抜く標高で朝焼けが綺麗なのはもちろん、朝日の当たる富士山も見られるし、山頂までのナイトヒルクライムも朝焼けを引き立ててくれる。

アクセスも悪くない。横浜から国道1号と135号を基調に走り、片道約80kmで山頂にたどり着ける。前日の夕方に寝ておいて、当日00:00に出発すれば04:00前に山頂着、ゆっくり朝焼けを見てダウンヒルし帰宅して08:00前という適度な距離だ。夜まで予定ぎっしりの時はつらいけど、2日連続で夕方までの予定の時には有効なやり方だと思う。

さて、いつもの通り準備して00:00頃家を出た

予想していたよりも西風が強烈だが、満月がまた綺麗だった。向かい風は辛いけど、イライラしても仕方ない。これもいいトレーニングと思って淡々と走る。00:00スタートだとヒルクライムを終えるまで完全に深夜だから、交通量の多い国道1号も静かだし走りやすい。

雲が多いけど満月が綺麗だ

何度も通っている道だから、もはや何も考えなくても勝手に登り初めの小田原についている。

いよいよここから箱根ヒルクライム…と言いたいところだが、あろうことかポツポツと小雨が降ってきた。風に加えて雨か…。日の出時間の天気は大丈夫かと心配になりスマホで天気予報を見てみると、03:00~05:00だけが完全な雨マーク。あぁ、最悪だ。

とはいえ家から60km以上走りここまで来たのだから、箱根だけでも登っておこうかとヒルクライムを開始した。

箱根は国道1号か旧道の732号のどちらからも登れるけど、基本的に僕は旧道派。それは1号に比べて獲得標高が100m近く少ないし、斜度がきつい分距離が短くさっさと登りを終わらせることが出来るからだ。

しかし今回は1号を選択。雨が降っている深夜なら、街灯のある国道1号を選択したほうが安全だ。それに、せっかくなら獲得標高が高い方を走っておいて、トレーニング的要素を追加したかった。

箱根湯本駅のあたりから、すでに路面が濡れてきていた。これはダウンヒルは気を付けなきゃな。

ここでふと思ったことが。いつも箱根を登るときは何かしら荷物があるし、登った後にも数百km走るから脚力をなるべく温存して走っていた。つまり、空身で本気ヒルクライムをしたことがない。

箱根湯本駅から国道1号最高標高地点まで、新道(13.3km・781mUP・Av.5.9%)だといつも大体65~75分ほど。せっかくだし本気で登ってみるか。さて、どれだけタイムを短縮できるのかー?

 

変なスイッチが急に入って、ギアを上げてガシガシ踏んでいった。こんな登り方するの、いつぶりだろう?(笑)

思いのほか脚は回っていって、ケイデンス80rpmくらいと高めでテンポよく走っていけた。国道1号は斜度が緩めでほぼ平坦な区間も多いから、そこでうまいこと脚を休めつつ躊躇なく踏む。

登るにつれて、雨風がどんどん強くなってきた。

ザーザーと辺りの木々は騒めき、木の葉がため込んでいた大粒の雨が横殴りに降り注ぐ。どうやらこれは、朝焼けどころではないな。だがもはや、そんなことはどうでもいい。ベストタイムへ一直線に踏んでいくだけだ。

サイコンはあまり見ていなかったけど、チラ見した感じだと15~20km/hで走っているようだった。いつもじゃ考えられないスピード。その新鮮味に満ちた爽快感が、上へ上へと僕を駆り立てた。

 

ガーミンに表示されている標高が、みるみるうちに高くなっていく。既にシューズもウエアも浸水していて気持ち悪い。

けど、なんだろう?この高揚感は。

登り切ってタイムを確認すると、45分。いつもより20分以上早い。僕って、こんなスピードで登れたのか。景色も状況も最悪なのに、ヒルクライムが楽しいとまで思えてきた。単純な僕。(笑)

辿り着いた国道1号最高標高地点は、冬山を想起させる暴風圏。風の音が強すぎて何が何だかよく分からない。もはや自転車に乗るのが困難なレベルで、早急に引き返した。

こんな時のダウンヒルに、ディスクブレーキはもってこい。雨だろうが何だろうが、いつも通り人差し指一本でブレーキは事足りる。どんな状況でもブレーキングに不安がないというのは、非常に頼もしいことだ。

下るにつれて、どんどん天候が回復していった。

どうやら、荒れていたのは山頂付近だけのようだ。ああ、逆ならよかったのに…。

ダウンヒルの終点、箱根湯本駅。川の下流の方には、しっかりと朝焼けが顔を覗かせていた。なんだ全く、これを山頂で見たかったのに…。まあいいか、これはこれで綺麗だし、帰りの天候はよさそうだ。そう自分に言い聞かせて、帰路に就いた。

帰りは風向きが追い風に変わる。行きで苦労させられた分、大いに楽しませてもらおうじゃないか!

強烈な追い風に身を任せ、帰宅時に脚を残しても仕方ないのでヒルクライム同様本気で踏んでみた。体感的には、L4~L5辺りのパワー。追い風なのに下ハンもって、高ケイデンスで回していく。

平地巡行の敵は空気抵抗なのだと、身をもって感じた。追い風ボーナスはすさまじく、今までにないスピードで景色が流れていく。サイコンを見やると未体験ゾーンの巡行速度=45㎞/hで走ることが出来ていた。

心肺的には結構きついはずなのに、速度への興奮が勝って辛さを感じない。シュコ―シュコーシュコー…と、踏むリズムに合わせて26cタイヤの走行音が鳴り響く。その音を聞いていると、無性にゾクゾクした。

ーあぁそうか。豪脚のあの人たちは、いつもこんな景色を見ているのか…。

ぼんやりと、そんなことを考えた。

ー無風でもこの速度で走れたら、そこにはどんな興奮が待っているのだろう?

 

ふいに、S-WORKS+コスカボのRaphaお兄さんにぶち抜かれた。ああ、強くなりたい。遠くへ行くためではなくて、単純に速く走るために。始めてそう思った朝だった。

おわり

*2020/01/20:画像サイズの調整や、誤字脱字の修正を行いました。

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