ツーリング記

【7話】友達『チャリで北海道まで行ったら面白そうじゃねw』からロードバイクを買い旅に出た話⑦宮古~青森

僕はTと2人、淡々と北へと向かっていた。

辺りは今までの海岸線と打って変わって、見渡す限りの森だ。広葉樹の深緑に、低木の葉の緑、生い茂る雑草の黄緑色…。同じようで絶妙に異なる緑色に囲まれながら、岩手県最後の街ー久慈を目指した。

ろくな休憩ポイントもないから、その辺の原っぱに入っていって天を仰ぐ。今日は兎に角天気がいい。真っ青な空に、もくもくと真っ白な雲が浮かんでいる。

虫に刺されるとか、自転車や服が汚れるとか、そんな細かいことはもはやどうでもよくなっていた。今を楽しむってことが、実はとっても大事なことなんだ。

*** *** * *** ***

Tと少し距離が空くと、一人で走っているみたいだ。

気が付けば僕は、高校の校歌や応援歌を歌っていた。…懐かしいなあ、あの三年間。僕の母校は行事に命を懸けているような学校で(実際に運動際には毎年数台の救急車が来ていた)、校則も皆無。ジャージにクロックスで登校していたっけ(笑)。 勉強して、部活して、警備員に隠れながら夜遅くまで部室でダラダラして。受験勉強してた一年前、こんなことしてるなんて想像もつかなかった。

木の葉の影が、強い日差しを受けてアスファルトに影を落とす。そのちらちらした明かりの中を、思い出と共に駆け抜けた。

自然の中で大声で歌うのって、本当に気持ちがいい。

*** *** * *** ***

久慈の街には、夕方に着いた。

今日の走行距離は120kmくらい。100km以上のライドにもずいぶん慣れてきた。

夕食には、たまたま見つけた「磯ラーメン」を頂いた。魚介のあっさりとしたスープに、ちぢれた細麺がマッチしている。初めて食べた味だったけど、これがなかなか美味かった。美味しいご飯があれば、また次の日も頑張れる。

 

適当な場所にテントを張って、就寝前の作戦会議。

「青森まであと130mか…」

「ちょっと長いけど、天気もよさそうだし明日中に行けそうだな」

T「だな、明日には行ってやりたい」

「いよいよラストだな」

T「おう、行ってやろう」

テントの天井に吊ってある自転車のライトに照らされた互いの顔を見ながら、明日に青森へ行く覚悟を決めた。

*** *** * *** ***

10日目が始まった。

テントをたたむのが今日が最後かも知れないと思うと、感慨深いものがある。

いよいよラスト、青森のフェリー乗り場まで走る。距離は130km、天気は予報通り快晴。雨よりは断然いいんだけど、日差しが熱くて体温がどんどん奪われてしまう。晴は晴とてまた辛い。

 

それでも、今日を最後にしてやるという気合でペース良く走っていく。

青森県に入ってからは、八戸、十和田、そして国道4号線に復帰して青森だ。八戸市街に入って、まともな街が久しぶりで感動してしまった。道路沿いにチェーン店が立ち並ぶのって、いつぶりだろう(笑)。 昼食はケンタッキーチキン。ジャンクフードの味が懐かしかった。

概ねペース良く走りながらも、途中からTがやけに遅いと思ったら、キャリアのねじ穴が舐めてキャリアがズレてしまい、荷物がタイヤに擦っているようだった。そりゃ遅くもなるわ…。ルック車の耐久性って、本当に旅ユースには向いてない。なんでネット上の旅人が安いバイクを勧めないのか、身をもって体験していた。

*** *** * *** ***

八戸を過ぎ、十和田も通過し残り60kmくらい。順調にバイクを進めていった。

時刻はお昼過ぎ。ペースは良く、今日中に青森に到着するのは出来そうだ。

しかし、既に暑さにやられ体力的には結構きつい。高く登った太陽が、じりじりと首元に照り付けていた。いくら水を飲んでもすぐに汗になって出てしまう。ひとまず公園の日陰で休憩することに。

「ああ、マジあっついなぁ。」

T「おぅ…」

「ん、T-?」

ダラダラしていたら、日陰のベンチでTが寝だした。キャリアが壊れた負荷はやはり大きかったか。まあいいさ、時間に余裕はあるんだし。

(僕も体力を回復しておこう…

Tにならって日陰のベンチに横になる。

(なんだこれ、意外と気持ちいいじゃないか…。

そして気づけば僕も、深い眠りに落ちているのだった。

*** *** * *** ***

西日が目に刺さり、僕らは目を覚ました。

昼寝にしては少々長すぎる時間を過ごしてしまったらしい。ベンチで寝たせいで背中が痛い…。脚を下におろした状態で寝ていたから、脚に血が溜まって立とうとしたら力が入らず転んでしまった。

「T、起きてる?」

T「ん。寝すぎたな」

「まあとりあえず、行こう。」

T「ん。」

日が傾いたおかげで、暑さが和らいできた。あと60km、ナイトライド必至だけど、まあ仕方がない。中途半端に残すのなら、今日のうちに青森に着いてしまいたかった。

*** *** * *** ***

辺りはみるみるうちに暗くなっていき、ついには夜になった。

街灯のない夜道、弱々しいライトの灯りを頼りに走っていく。100ルーメンにも満たない安価なライトでは、あまりにもスペック不足だった。先頭を走ると特に、目の前が真っ暗闇で怖い。

恐怖から逃げるように、僕らはペースを上げていった。

多分今までで一番早い巡行速度だったんじゃないだろうか。早く青森の市街地に到着したい一心で、ペダルを踏んでいく。

(もうすぐ、もうすぐだ…。

*** *** * *** ***

やっとの思いで着いた青森市は、とても静かな街だった。

Googleマップを頼りに調べてみると駅近くの銭湯がぎりぎり開いていたから、急いで向かって滑り込む。フェリーに乗り込む前に、ちゃんと汗を流しておかないとな。気仙沼以来3日ぶりの風呂だ。

やっぱり風呂は気持ちがいい。身体の疲れが抜けていくし、心が落ち着く。

「あぁ、いよいよここまで来たな」

T「おう、フェリー乗れば函館か」

「長かったなあ…」

T「いざここまで来てみると、不思議な感じだな」

「うん、案外実感ないもんだな」

深夜の青森市を抜けていき、フェリー乗り場へと向かった。

乗るのは青森夜発⇒函館朝着の便。つまり、明日の朝にはゴールの函館という事…。さあ、いよいよ旅のクライマックスだ。

つづく

(最終話はこちら)(6話はこちら)

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