ツーリング記

紀伊半島ライド③-暴風の伊勢志摩パールロード~紀伊半島南端へ

疲れていて寝ているうちは、まだよかった。

フリータイム500円という超格安な料金に釣られて、近くのカラオケボックスに移動したのが間違いだった。そういうところって、建物が古くて壁が薄いから周りの歌声がガンガン聞こえる。一人で歌いつくした後は、ただただ不快な空間に居続ける羽目になった。

雨は相変わらず降っていたんだけど、結局我慢しきれず、濡れてもいいやと雨の中スタート。

この雨雲レーダー、逆にテンション上がるよね。

雨のナイトライドだから、とにかく安全への配慮が第一。自転車なんか居るわけないと思っているドライバーが多く、しかも視界が悪いから、発見してもらうために最大限の努力が必要だ。

リアライト×2点灯、ヘルメット尾灯点滅、反射ベスト着用、足に反射テープを巻き付ける。シューズカバーとグローブにも反射材が入っているから、アピール力は相当なもののはず。これで見えなかったなんて言わせないというスタイルだ。

 

幸いなことに雨は予報より早く止み、レインウエアの裾口からしみてくる前に曇天へと変わっていった。しかし厄介だったのは風。ずっと吹く向かい風とかではなく、突発的に吹く猛烈な風だった。ダウンヒルしているのに止まりそうになるし、横風の時はディープリムでもないのに落車しかけた程だ。

真っ暗闇の伊勢志摩パールロード

楽しみの一つだった伊勢志摩パールロードは、雲がなかなか消えないのか真っ暗闇だった。風で雲が流れてくれて、月が顔を見せてくれるのを期待していただけに、残念。

実は僕が一番好きな景色は、海岸線に浮かぶ月だったりする。そのくらい、本当にきれいなんだ。夜の海岸線を走ったことがある人でないと見られないし、月の出・入りの時間にも左右されるから、結構レアな景色でもある。

パールロードは有名なだけあって、かなり走りやすい道だった。路面状況は良好で、道幅も海岸線の道路にしては広かった。コースプロファイルとしては伊豆半島を少し優しくした感じ。風がなければ、快適サイクリングが出来そうだ。

田舎特有の卵自販機。暗闇で貴重な明かり笑

志摩を通過すると、50km単位でしか町がなくなる。町といっても漁村なので、飲食店が立ち並ぶような町は最短でも260号線を100km走った先の尾鷲市だ。

街灯のない真っ暗な道のサイクリングは、星や月の輝く空が唯一の楽しみなんだけど、今回は見られそうにない。残念に思いながら、一人海岸線の峠を越えていく。

 

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と、ある峠を越えダウンヒルを終えたところで、空気が急に変わった。上手く言葉に出来ないけど、周りの世界に僕一人がぽつんと取り残されているような感覚…。

怖くなって空を見上げた。(僕は怖くなると、空を見上げる癖がある)しかしそこにあったのは、とてつもなく分厚く、広大な雲の波だった。

真っ暗な空の所々が白い帯になっていて、はじめは晴れているのかと思った。しかしその白い帯以外が異様に真っ黒で、不思議に思い目を凝らしてみると、雲の薄くなっているところが月明りが貫通して白くなっているのだった。

 

次の瞬間、僕は下ってきた峠を引き返していた。

なんでだか分からないけど、この先に行ったいけないような気がした。ただ怖くなっただけかも知れない。順調に走っていたのに、どしてだろう。いまだによく分からないけど、あんなことは初めてだった。

そのまま一つ手前の漁村まで戻り、広場にテントを張って朝が来るのを待つことにした。強風がテントを叩く音で、よく眠れない夜だった。

 

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翌朝。

寝不足気味の目をこすりながら、補給食を食べて日の出を迎えた。こういう時の朝日ほど、僕を安堵させるものはない。太陽は偉大だ。別に僕は無信教だし、スピリチュアルな話は好きじゃない。だけど、一人で自然を感じると、昔の人が自然現象と神を結び付けて考えたり、星々に物語を付けたりする気持ちが、なんとなくわかる気がする。

昨日引き返したあの道は、明るくなってしまえば何てことない道で、昨日のあれは何だったんだろうと、頭の中で思考が渦巻いていた。

朝焼けの漁港は美しい。

天気は晴れ。昨日の遅れを取り返すべく、今日は最低でも紀伊半島の南端、串本市まで行きたいところだ。晴れた日の海岸線を楽しみながら、紀伊半島を南下していく。

朝ご飯は道の駅「紀伊長嶋マンボウ」にて。結構綺麗な道の駅で、その名の通りマンボウが食べられたりする。その他海産物も破格。アワビや伊勢海老が1匹数百円で売っていたり…。

残念ながらそんなものを積むことはできないので、食堂でご飯だけ頂いた。

サンマの寿司なんかもあったり。

 

カツオメンチ定食。大盛り無料!

海沿いをひたすら走り、尾鷲~熊野と抜けていく。熊野市には鬼が城という場所があって、波風が長年にわたって削り上げたことで作り上げられた侵食地形が見られる。

ルートを検索していて見つけ、「なんとなく面白そう」というだけで立ち寄ったけど、とても良かったので行った甲斐があった。

地図上はここ↓

所謂侵食地形なら日本全国さまざまな場所で見られるけど、ここの地形はちょっと違う。どうしてこうなったのか、岩肌に小さな穴のようなものがたくさん開いているのが特徴だ。

こんな感じの岩肌

 

一見岩とは思えない

しかも、その規模がすごい。岩肌が波のように抉られている箇所がたくさんあって、それが人がまるまる入れるサイズばかりだ。

人と比べるとそのサイズがわかる

遊歩道が整備されているので、こんな感じの断崖を歩くことが出来るいつも遠くから見ている絶景に、入り込める感動。自分が絶景の一部になっているような、不思議な感覚だ。

ただし、自転車で行きたいという方は要注意。足元が不安定なので、SPD-SLのシューズでは歩きづらいだろう。こういうときのためにも、旅系ライドにはSPDシューズが超おススメ。

足元は超凸凹

熊野市を超えると、海岸線のアップダウンが少なくなるので、距離を稼ぎやすくなった。約200kmほどで、南端の串本町に到着。つく頃には夕焼けを通り越して薄暗くなってしまった。

途中の夕焼けが最高に綺麗だった

アップダウンは少ないとはいえ、海岸線の地形は面白い。紀伊半島は、他の半島系に比べて遠浅の岩礁帯が多い気がした。こういう地形の違いを感じながら走るのも、また面白かったりする。

名所の「橋杭岩」実際に見ると結構大きくて、なんでこんなになったんだろうと不思議だ。

南端の串本市に着いたところで、今日のところは終了。2日間の寝不足で、とにかく早く寝たかった。(笑)

思っていたよりも大きな町だったので、人気のない寝床を見つけて就寝。明日は日の出前から走りだそう。明日中にゴールの大阪まで行けるかな?横になると、あっという間に夢の世界に入ってしまった。

つづく

*2020/01/20:画像サイズの調整や、誤字脱字の修正を行いました。

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